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お色気小咄 23


胃袋と毛

 オリブ未亡人は数年まえ寡婦となったが、子どもいなければ、近い親類もなく、それかといって浮気をする年でもないので、情欲を傾けつくす相手といったら、大きな黒猫のミミがいるばかりだった。
ところが不幸は友を引くというたとえのとおり、このあわれな老婦人の猫が、べつになんという原因もなくて、とつぜん死んでしまった。
「きっと、ミミはだれかに一服盛られたんだよ」
これがオリブ未亡人の最初の考えだった。
近所の人のいたずらとしたら、あまりに悪どい仕業だと、どう考えても業腹でならないので、医者をたのんで、解剖してもらうことにした。

「いや奥さん、これは毒殺されたんではありません。下手人が出るわけはありません。つまり一種の自殺です。お宅のミミも、他の猫と同じで、体をなめる悪い習慣があったのです。で、長い年月には、毛が胃袋の中にたまって、それが死因となったものです。ごしょうちのとおり、毛というものは不消化なものですから、それがいっしょにかたまって結石を作ったのです」
オリブ未亡人は、長い間考えこんでいた。過去のことを思いだすと、深いため息が出るのだった。
「かわいそうなうちの人も、あんなに丈夫だったのに死んでしまうなんて、やっといま、その原因がわかったような気がするわ。あの人もなめるくせがあったんだもの」

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