|
艶笑落語2
三遊亭圓歌 えー、これから秋ンなりますと、”味覚の秋”とかいってネ、食欲がさかんになりますナ。その、秋の味覚ン中でも、結構なものが、松茸でございます。あたくしも、アレは好きですナ、え、焼いてよし、おツユにしてよし、ナマでよし・・・。まア、ナマじゃ、あんまり食べませんけどね、うちの女房なンかア、ナマのヤツをよく食べるんですが・・・。 なにも、こンなところで笑うこたアないヨ、お客さんだって、けっこう食べたり、食べさせたりなンぞしているくせに・・・。 えー、松茸屋が、松茸を売って歩いている・・・。 松茸屋「えー、松茸ェ、えー、松茸ェ・・・」 女「ちょいと、ちょいと、松茸屋さん、ちょいとォ・・・」 松「ヘイ、毎度ありがとう存じます。えー、どのへんがよろしゅうござんしょう」 女「そうねェ・・・あア、これがいいわ。随分とリッパじゃないの。おいしそうねェ。これ、いくら?」 松「ヘイ、十五銭ですが・・・」 女「まアねェ、ねだんは手ごろだけど、あたし、ひとりだからねェ、こんな大きなの食べきれないわ。もう少し、ちっちゃいのにしようかしら・・・・こっちのは、いくら?」 松「ヘイ、十五銭です・・・」 女「エ、大きいのと、おンなじなの?」 松「ヘイ、同じでござんす」 女「おかしいじゃァないの。大きいのと小さいのと、同じ値段だなんて・・・」 松「ヘイ、あのう・・・松茸ァ全部、つッこみでございます・・・」 笑い話 艶笑落語 『松茸』 下につづく ![]() 艶笑落語 『松茸』 つづき えー、松茸ァつっこみだそうでございまして、あたくしも、この・・・"松茸"のはなしを、いくつか、つっこみで(まとめて)申しあげますが・・・。亭主「おう、今、帰ったィ」 女房「あァ、お帰ンなさい。おや、何を買って来たんでね?」 亭「あァ、松茸をナ、ウー、買って来たんじゃなくて、友だちンところで、もらって来たんだィ」 女「おや、そうかい?そりゃァ何よりだヨ。わたしも大好物だからネ。まア、いい形してるねェ・・・」 亭「いじるんじゃァねえヨ。女ァ松茸なンぞいじってるなア、あんまり恰好のいいもんじゃねえや。あア、今日は、おれ、一ぺえやって来たからナ、今、食べるなアもてえねえや。こいつア、明日の楽しみにしよう。明日の朝、おつゆにでもしてくれよ。えッ、楽しみにするんだからナ、鼠にでもかじられないようなとこに、大事にしまっときなよ」 てンで、その晩は寝る。 からすカアと鳴いて、夜が明けると、 亭「あア、よく寝た。ウーン、楽しみだねえ、今日は・・・。え、昨日の松茸・・・あれを食べなくちゃァナ。・・・うん、おいおい、松茸のおつゆこしらえてくんなよ。あまったらナ、金網の上にのっけてナ、焼きあがったところへ、ゆずなんか垂らしてナ・・・」 女「あらァ、ちょいと、おまえさんッ!」 亭「な、なんでえ、どうした!?」 女「すっかりダメになっちゃったんだよ、松茸が・・・」 亭「え、松茸が?そんなバカな話ってねえだろう。エ、一晩で、おめエ・・・みんなダメになっちまうなんて・・・。見してみろィ・・・あっ、こりゃひでエや、すっかりいかれッちまってるじゃねえか。どこへ、しまっといたんだい、この松茸?」 女「それがネ、鼠にかじられちゃいけないと思ってネ、米びつの中ィ入れといたんだよ」 亭「米びつ?馬鹿だなア、おめえは!?松茸てえものはナ、米粒一つぶついたって、クサるといわれるくれエのもんだよォ」 女「あら、そうなの。だから、フンドシにゃ糊(のり)をつけないんだね・・・」 笑い話 艶笑落語 『松茸』 下につづく ![]() 艶笑落語 『松茸』 つづき 秋の山ってのも、紅葉の間はきれいなんですがネ、こいつ、葉っぱがみんな落ちっちまうてェと、風通しがよくなりましてネ、ピューッと、秋風が吹きっとおる、柿の木と栗の木が、枝をこう、ちぢこまらしちゃって、柿「おう、栗ィ・・・」 栗「なんだい、柿ィ・・・」 柿「寒いなア、えッ」 栗「あア、こんな日は、たまらねえナ」 柿「たまらねえッたって、おめえはいいよ、なア、うらやましいや」 栗「どうして?」 柿「どうしてって、そうじゃねえか。おめえは、まず、一番下に、渋皮(しぶ)だろ?その上に固(かて)え皮があって、そいからイガだ・・・なア、三枚も着物ォ着てやがる。そこへ行くと、おれなんざ、うすッ皮一めえだ。合わねえや、全くゥ・・・。一枚ぬいで、おれにまわせ」 栗「何ォいってやがンだ、このカキゃァ!つやつやしたいい血色しやがって。おれなんざ、皮むいてみろ、青白い肌ァしてふるえてンだ・・・」 柿「色ァ関係ねえじゃねえか。イガだけでもいいからよ、よオ、貸してくりィ」 栗「そうはイガねえや、これ、貸しちまったら、先祖に対して申しわけねえ」 柿「何もこんなときィ先祖のことなんぞ、持ち出さなくてもいいじゃねえか」 栗「だってそうじゃねえか。この三枚の着物はナ、先祖が苦心してこしらえて、伝えてくれたもんなんだ。てめえが、うすッ皮一枚でやりきれねえとかなンとかいうのなら、そりゃ、先祖がいくじがねえからだよ。あきらめナ」 柿「何をォ・・・ヤイヤイ、先祖のことまで持ち出しゃァがったナ。言うにことォかいて、ご先祖さまのことまでコキおろされちゃ、了簡(りょうけん)ができねえんだ。このあまぐり野郎、目のクリ玉クリぬくぞ!コンチクショウ!」 栗「来るか、このカキィ!来たら、カキむしるぞ・・・」 てンで、ケンカになる。 柿がまッ赤になってパーッととびつくと、栗がこの、イガを逆だてましてネ、 「野郎!」「チクショウ」 とやってるところへ、ちょうどわきの松の根元から松茸が顔を出して、 松茸「チェッ、うるせえやつらだなア、昼寝も、ロクスッポできやしねえや。おい、柿に栗、おめえたちァ、キはたしかか、ほんとにィ。みろ、あそこで、アケビが笑ってらア。くだらねえことでケンカして、傷でも負ってみろ、いい材木になれねえぞ、もう・・・」 栗「いやア、そう言われると、めんぼくねえが、この柿の野郎がネ、あンまり根も葉もねえことに言いがかりをつけやがるからネ」 柿「いや、そうじゃねえ、栗の野郎の言い草に、トゲがあるからよォ・・・」 松「ま、ま、まァ、マッタケ、マッタケ・・・。両方一ぺんに言っちゃわからねえ。順々に聞こうじゃねえか。え、なンだって?・・・フンフン、柿のほうは、うすッ皮一枚でさぶい?だから、栗の着てェるものを一枚貸せといった・・・うん。で、栗のほうは?エ、こりゃァ、先祖からのもらいもんだから、やれねえって?ウン、それに一枚でもぬぎゃァ、青白い肌してるからもたねえ?・・・ヘーエ、やれやれ、てめえたちゃァ、また、ぜいたくなケンカしてやがるなア」 柿、栗「どうしてだい?」 松「てめえたちゃナ、たとえ、薄皮一めえでも、着ているだけでもありがたく思わなきゃなんねえぜ」 柿、栗「そうかねェ・・・」 松「そうともサ。このおれを見ろ。この通り、身は松茸でありながら、フンドシもしてやしねえ・・・」 定本艶笑落語 小島貞二編より HPを友達に教エル © SEIWA
|